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あなたのことを覚えておくために

舞台『チョコレートドーナツ』感想

はじめに

ご覧いただきありがとうございます!

舞台『チョコレートドーナツ』を一介のヒガシファン(新規)が観劇した感想です。ちなみに運良く複数回観劇することができたのでそれぞれの回のをまとめて書いてます。

観劇の感想ブログなんて初めて書くので、要領がよくわかってないのですが、まずは印象に残ったシーンをかいつまんで、なるべく順を追って書いてみます。記憶を頼りに書いているので順番が前後していたり、台詞等も正確ではないかもしれませんが、広い心で見て頂ければと思います。

 

1幕

谷原章介さん扮するポールが、裁判に関わった人々へ送った手紙を読み上げる場面からこの舞台は始まります。谷原さんのあの低音ボイスに、一気に物語の世界へ引き込まれました。いや、本当に良い声だった…

 

舞台は替わり、東山紀之さん扮するルディとドラァグクイーン仲間たちが"Come To Me"にのせて踊るショーパブへ。そこへポールがおずおずと入ってくるやいなや、ルディは一瞬で彼をロックオン!ポールを見つけたあの瞬間のルディは本当に可愛かった。視線とダンスでポールを誘惑するルディは本当に色っぽくて、小悪魔っぽくて…!!
金のキラキラドレスの激深スリット(?これはスリットなのか???)からのぞくガーターとおみ足を死ぬほどガン見してしまった。いや、あれは見るなという方が無理です。ハイヒールの分を抜きにしても股下3kmくらいあるんかと思ったし、つるっつるでお綺麗でした。あと胸筋がすんごかった。ていうか足だけじゃなくて、見えてる肌という肌がぜんぶツヤツヤで美しかった。54歳男性とは…?

 

一目で互いに惹かれあい、初めて言葉を交わす二人。「裏口で待ってて」とかわいくささやいて去っていくルディに、わたしがメロメロになってしまいました。

 

ポールを部屋に招いたルディは、なんとポールの服をいきなり脱がす!ズボンまで下ろされてパンツ一丁になっちゃってて普通にびっくりしました(笑)

ゲイバーの踊り子と関係を持つなんて初めてで、勝手のわからないポール。ルディと夜を共にするためにお金を渡そうとしてしまうのですが、「私は安くも軽くもないの。出てって!」と激高し追い払うルディが印象的でした。ルディ最大の魅力の一つであり、最大の欠点でもある、感情の起伏の激しさが最初に見えた瞬間。

 

このあたりでルディは、爆音で音楽をかけ始めた隣人・マリアンナと口論に。マリアンナ、ガチで怖かったです。捨て台詞も、それコンプラOK大丈夫?というような暴言で… ヤク中女を演じきったまりゑさんのお芝居、鳥肌レベルでした。実は彼女、ルディが憧れるベット・ミドラー役、そしてハロウィンパーティのシンガー役として歌も披露なさってたのですが、これまた美声で!魂を突き動かすような熱唱を聴かせてくれました。

 

隣室に乗り込んだルディがマルコを発見した後、大家さんが家賃を取り立てにくるシーン。原作映画の「”明日は今日じゃない”って、あんた哲学者?」というセリフがここにもあって、おぉっとなりました。

 

それから、ルディがお腹をすかせたマルコにチーズとクラッカーを与えるシーンも。映画の「チャンピオンの朝食よ」「フランス人もこれを」というセリフがわたしは大好きなのですが、「最高の夕食よ!フランス人はみーんなこれが大好きなの。ボンジュール、マルコ!ジュテーム、ボナペティ!うふふ♡」(←とりあえず知ってるフランス語ぜんぶ言うの超かわいい)みたいな形で再現されてて嬉しかった…!こういう楽しみ方ができたのも、予習できる原作があったからこそだなぁ。ありがたみ。

 

また別のショーパブのシーンでは、ルディとドラァグクイーンたちが黒のボンデージ?姿(!)でムチ(!!)をもってステージに登場するんですけど、このお衣装が本当にヤバすぎてヤバすぎて失神するかと思った。東山さんがテレビで言ってた「SM女王みたいな衣装」はこれか、と…… 上下セパレートで、上は素肌にノースリーブで前をあけたベスト(?)、下はきわどすぎるホットパンツ、おまけに頭にはポリスハットのあのお衣装…今思い出しても息が止まりそうになります。

しかも、ここからがもっとすごくて。このお衣装から着替えてバスローブを羽織る前に、楽屋にやってきたポールと話しながら、ついたても何もない場所で上の服をいったん脱いでしまうんです。つまり、バスローブを羽織る直前の一瞬、上半身があらわに……「え、こんなん見せて大丈夫?」って本気で思いました。ちなみにわたしが観劇したときのお隣のお姉さまは、彼が衣装を脱いだ瞬間「ハッッッ…」っと息をのんでました(笑)あれは忘れられん。

 

そのシーンの続きで、映画にもあったFキーのブルースにのせてルディが自身の生い立ちを歌い語る場面。ここもまたすごかった。バスローブ+裸足姿のおみ足again…

ポールに正直さを褒められたルディが、「私のどんなところがすごい?もっと言って」と、キラキラした瞳でポールを見つめるのがすごく健気でかわいらしかったです。そして原作映画のルディは歌い出す前、ポールに「かわいく座ってて」と言いますが、舞台では確か「座っていい子にしてて」になってたと思います。ここでおしゃべりデートがチラつくのが隊ファンの性…?

「♪稼いだお金は全部、家賃ですぐパー!」みたいな歌詞があるんですけど、その「パー!」の部分でルディさん、ピアノの上に座った状態で大開脚するんですよ(そして「パー!」の声の張りがすごい)。先ほどの黒ボンデージで峠は越えたと思っていた(?)ので、ヒッッッってなりました。でもこの生い立ち紹介ソングはすごく好きです。
あと、「♪ふりきりで…」という歌詞の「」がめっちゃ東山さんのた行だった。(笑)

歌を褒められたルディがポールに抱きつくシーン。ルディはバスローブを脱いだ時に、ついでにブーツも脱いで裸足になっていたので、抱きついたルディはちょっとだけポールより背が低くて。ハグした時の身長差にちょっとキュンとしたのは内緒です…

 

そのあと最初の裁判等々があり、マルコの暫定的緊急監護権を得たルディとポールが、ポールの家に作った子供部屋へマルコを連れて帰るシーン。子供部屋のセットが本当に可愛らしかった。「これが、ぼくの、おうち?」とうれし涙をこぼす彼につられて涙腺が緩みました。

ここからがわたしの大好きなシーン。マルコが棚にあるオルゴールの蓋を開けると、素敵なメロディが流れ出して。ハッピーエンドのお話を聞かせてほしいとねだるマルコに、原作映画のルディは自作の物語を語って聞かせるんですが、舞台では、流れているオルゴールのメロディに合わせてルディが歌い出すんです。魔法が使える少年と、パパとママと、気難しい妹のロラベルのお話。ルディが歌い出すと、オルゴールに加えてバックバンドの演奏も入ってきて、とても幸せなシーンでした。

観劇後にパンフレットを読んで知ったのですが、この曲は『魔法の少年マルコ』という題で、エミレオ役のエミ・エレオノーラさんが作曲されたそう。東山さんの声の魅力がよく表れるようなキーでつくられていたこの曲、本当に素敵でした。オリジナルと思われるこの曲だけでも、映像や音源として残してほしい…

 

プロデューサーに送るデモテープにルディが自分の歌声を吹き込む場面。スローバージョンの"Come To Me"を聴くうちに、ルディの向こう側に東山紀之さんが一瞬見える感じがしました。彼の仕草や魅せ方は間違いなくルディそのものなのですが、歌の場面になると、「あ、そうだ、この人は東山さんだ…」と思わせられるんです。ストレート以上ビブラート未満のロングトーンのゆらぐ感じとか、ちょっと独特なタ行の発音とか、少し鼻にかかった歌声とか…そんな歌の癖や特徴は、少年隊の曲で聴いた「ヒガシ」のそれと同じだったからかな。

 

ポールが職場の上司・ウィルソンに招待されたハロウィンパーティーに出向く場面では、ルディが"ポールの妻"としてマルコを連れて現れます。この時のルディの、『アダムス・ファミリー』のモーティシアに扮した黒いロングドレス姿がまた美しくて!妃海風さん扮するモニカの白雪姫や、マルコのフランケンシュタインの仮装もかわいらしかったなぁ。モニカとマルコが手をつないで踊っている姿がほほえましかったです。パーティーを盛り上げるシンガーが歌っていた"Don't Leave Me This Way"が素晴らしかったです。ソウルフルな歌声!

 

楽しいパーティーの裏で、差別を目の当たりにし激しく憤るルディと口論になるポール。家族3人での幸せを望みつつも、まだ完全には覚悟を決め切れていないポールの葛藤がうかがえる場面でした。

 

マルコの世話をしていたために、遅刻ギリギリでショーパブへ出勤してきたルディ。先に楽屋にいたドラァグクイーン仲間のキャリーから心ない言葉をかけられ、精神的に追い詰められたまま、ステージに上がります。

ここでまた新しいステージ衣装が。今度はピンク色にお花が沢山ちりばめられた、妖精のように可愛らしいデザイン(ネオ阿佐ヶ谷姉妹…と思ってしまったのは本当にすみません)。前述の楽屋でのシーンで、キャリーが話している間ルディは鏡に向かいメイクをしていたのですが、そこでおそらく、ドレスに合わせたピンク色のアイシャドウとリップを実際に塗っていたような気がします(気のせい?でも、1幕最後のシーンなので、この後お化粧替えしようと思ったらできるしな…などと考えてました)。とにかくここのショーシーンは、ドレスもウィッグもすべてがとってもファンシー。リップシンクの曲"I'll Never Love This Way Again"も素敵でした。「♪あなたは私のそばでいつも ただ笑ってくれた 無邪気に」というような歌詞が、マルコに重なって聴こえて。

ピンクの大きな羽根扇を持ったドラァグクイーンたちに囲まれて踊るルディ。しかし次第に表情が曇っていき、ドレスの一部やウィッグを投げ捨ててステージから逃げ出してしまうところで、1幕は終わります。

 

ここまでの1幕が約60分なんですけど、体感20分くらいだった。その分、続きも気になるしで、幕間の休憩20分間は体感時間40分くらいに感じました(笑)

 

2幕

ご覧になった方、2幕の最初、びっくりしませんでしたか?十字架を手にした三角白頭巾の集団、クー・クラックス・クランKKK)が、アップテンポの楽しげな"America The Beautiful"にのせて踊っているネイティブ・アメリカンを…
映画にはない描写ですが、アメリカにおける差別問題を語るにあたって、確かに白人至上主義、KKKは無視できない存在だと思い出させられました。

 

2幕では裁判シーンがメインの見所になってきます。法廷の椅子でルディは、ちゃんとお膝をくっつけて、脚をそろえて座っていてさすがだなぁと。裁判シーンで印象に残っているのはやはり高畑淳子さん扮するマイヤーソン判事。彼女が入廷すると、それだけで空気が一変したのが分かりました。

 

また、敵対する立場のランバート弁護士も登場し、ルディとポールの立場はますます不利になっていきます。極めつけは、検事局が仲立ちして早期仮釈放させたマリアンナに、母親として監護権回復を求めさせる事態になり、窮地に追い込まれる。原作映画でこの流れは知ってはいましたが、やはり観ていて苦しかったです。

 

失意のルディはかつて働いていたショーパブへ。「♪愛なんて どこにもないの…」エミレオのピアノにのせて"Love Don't Live Here Anymore"を歌います。エミレオがピアノを弾きながら、うつむくルディの顔を心配そうにのぞき込んでいたのをよく覚えています。

そしてここで、ルディによくしてくれていたオーナーが現れて、ハリウッドのクラブからシンガーとしてルディにオファーがあったと告げます。オーナーは原作映画には出てこない人物ですが、ルディにとっても、観ている側のわたしにとってもある意味救いの存在になってくれたので、いてくれてよかった。

 

そして迎えた控訴裁判の日。多くの難しい裁判を扱ってきた黒人弁護士をつけたルディとポールでしたが、判決は覆ることなく… ここからはもう本当につらくて。映画を観た時よりも、目の前で判決が下される舞台を観ている方が、より心を締めつけられる思いでした。

 

最後は、ルディがハリウッドのクラブで"I Shall Be Released"を歌う場面。心の底から歌うルディの歌声と姿から、ルディが本当に届けたかったメッセージが伝わってきましたし、ルディの向こう側に東山さんが見えたような気もして、この感情は正直どう表現したらいいか今もわからずにいます。及川眠子さんの美しい訳詞もとても心に響きました。

 

この行き場のない思いは、カーテンコールで演者とバックバンドの皆さんの笑顔を観て、やっと少しだけ救われた気がしました。
特に印象的だったのは、高畑淳子さん。最後に舞台に現れてもなお、マイヤーソン判事が法廷で見せていたような表情を崩さなかったのに、スポットが当たったその瞬間にすべてを解放したような笑顔になっていて…あの笑顔は忘れられません。

最後にルディ、マルコ、ポールが手をつないで笑顔で舞台へ。高橋永くん/丹下開登くんを愛おしそうに見つめる東山さんと谷原さんの笑顔が本当にまぶしかったです。

東山さんのファンになって一年半、彼の三方礼をこの目で観る日がこんなにも早く訪れるとは思っていなくて。本当に、無事に観劇できて良かったな、という気持ちでいっぱいになりました。

 

雑感

ここからは全体を振り返った感想です。

 

1幕、2幕ともに舞台の使い方や場面の転換の仕方が非常に斬新だなと感じました。壁を活用して舞台をななめ半分だけ使ったり。転換がとにかく多く、演者さんも裏方さんもハードだったと思います。演者さんに関してド素人目線でいうと、暗転してるときにダッシュではけたり定位置につけるのがそもそもすごいこと。それに、あれだけの舞台装置を持って地方公演を回るのは大変なお金も労力もかかるはず。改めて、舞台って色々な方の素晴らしいお仕事の結晶であって、すごいものだなぁと思いました(小学生の感想?)

 

キャリー役の穴沢裕介さんが素晴らしかった!
ルディ以外のドラァグクイーンたちが集まってダンスレッスンをする場面でコーチ役をしていたキャリーはすごく輝いていたし、ルディと対立する場面ではマイノリティとしての苦悩や葛藤を体いっぱいで表現していらっしゃいました。あと、東山さんに負けず劣らず小顔で美脚、スタイルが素晴らしかったです。

 

ポール役の谷原章介さん。
序盤の自分に自信のないおどおどした感じから、中盤の差別を受け入れてしまう場面を経て、最終的には社会的地位のある職を辞してまで、マルコのためルディとともに戦おうとするポールの姿勢の変化が印象的でした。家庭局のヒアリングでついふざけてしまうルディにかけた、「僕は仕事を辞めたんだよ」という台詞が、特に心に残っています。検察官役ということで、法律関係の難しい長ゼリフに加え、ストーリーテラーとしての役割もあり、大変な役どころだったと思いますが、素敵なお芝居を見せて頂きました。余談ですが、前の方のお席で観劇した回では途中で目が合ったような合わなかったような…いえ、合いました(断定)
あとはやっぱりお声が素晴らしくて。ポールは本当にルディとマルコを愛しているんだな、というのがよく伝わってくる、包み込むようなお声だと感じました。

 

最後に、ルディを演じた東山紀之さん。
言うまでもないですが、圧倒的ビジュアルで、ドラァグクイーンといえば!のショーシーンをより華やかに魅せてくれました。そして頭小さすぎ。鼻高すぎ。腰の位置も高すぎ。家庭局のヒアリングでソファーに座った時の座高低すぎ。洋服屋さんにあるよくできたマネキンのようでした(いい例え方が思い浮かばなくてすみません)
それから、想像よりも多く用意されていた歌のシーン。原作映画のアラン・カミングの歌(特に "I Shall Be Released")と比べると、東山さんはひとつひとつの言葉を語るように歌われていました。でも、東山ルディの魂の叫びはしっかり、十分すぎるくらいに伝わってきました。
先述のマルコにお話を聞かせる場面の歌は、非常に東山さんの持ち味にあっていたように思います。Fキーのブルースにのせて生い立ちを語る歌や、"Love Don't Live Here Anymore"も良かったなあ。みなさんにとって一番印象的だったルディの歌はなんでしたか?

 

 

 

おわりに

死ぬほど長文になってしまいました。でもまだ書き残したことがあるような気もする…ですが一旦ここら辺にしておきます。ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございました!

素晴らしい原作映画、そしてこの舞台に出会えて、さらにそれに主演している大好きな東山さんをこの目で観ることができて、本当に本当に幸せでした。
今回、コロナ禍やそれぞれの事情で観劇が叶わなかった方も、またこの舞台に巡り合える時が来てほしいな、と心の底から願っています…!